2005年6月10日

禁煙

  実は、今、私は煙草を吸っていない。 3月の初めからであるから3ヶ月間になる。 あれだけ「嫌煙運動」に対して反発していたのに、何故???????

  ある時、右上の奥歯の歯茎が腫れて痛み出した。 生来医者嫌いなので、ぐらついているその歯を自分で抜いてしまった。 これで一安心と思ったら、今度は左上の奥歯が痛み出した。 虫歯になったことがないため歯医者に行った経験がなく、加えて、医者嫌いである私も、この時ばかりは歯医者に行って見て貰うことにした。
  行くと早速レントゲンを撮られ、診断の結果「歯周病が進んで歯槽膿漏になって、骨がなくなっている」と云われ、左上の歯は呆気なく抜かれてしまった。 これが去年(2004年)の3月のことである。 それ以来、毎週歯医者に通って治療をして貰い、もう1年を過ぎてしまったのだが、治療に行く度に『「禁煙」をしろ』と医者に云われていた。 ニコチン摂取により血行が悪くなることに加えて、ヤニで不潔になり易く、治るものも治り難くなるのが理由とのことだった。
 
 40年も吸い続けて来た煙草を歯医者なんぞに云われただけで、止める気にもならず、軽く受け流していた。
 が、ある日「止めて見ようかな・・・」と、ふと思った。 
 何故か自分でも解からない。 「魔」が差したのかも知れない。 

 そしてその日、歯科医院の帰りに薬局に立ち寄って「ニコレット」なる禁煙補助剤を買い求めた。 「ニコレット」はニコチンを含ませたガムだと思えば良い。 これを噛んでいると、ニコチンが徐々に溶け出して口内粘膜を通して吸収されるから、ニコチン中毒の禁断症状を緩和する効果があると云うことらしい。 そんな効果を信じた訳ではないが、兎に角普通のガム替わりに噛んでいると、不思議なことに煙草を吸いたくなる時間的間隔が長くなるのに気が付いた。
 「ウン? 効果がある!?!?」

 私はその頃、日に30?40本の煙草を吸っていた。 しかし、本当にニコチンが欲しくて吸っているよりは「習慣」で吸っている方が多いと予てから思っていた。 そこで、この習慣で吸っている煙草を減らして見ようと考えた。 例えば、今までであれば、家を出て最寄の駅に行くまでに1本、東京駅に着いた時に1本、地下鉄を降りて職場に着くまでに1本、職場について自分の座席に着くまでに1本・・・。 何と、朝家を出てから仕事を開始するまでに4本の煙草を吸っている勘定になる。 これを、家を出て最寄の駅に着くまでには吸わない習慣にすれば良いのである。 東京駅に着いても吸わない習慣、地下鉄を降りて職場に着く間に吸わない習慣・・・・。 と考えると、比較的気楽に減らすことが出来るだろうと思えた。 但し、この時、私の背広のポケットには煙草がなかったか、と云うと、実は常に持っており、吸いたい時は吸っていた。 しかし、「吸わない習慣」を意識し、「ニコレット」を噛んで喫煙と喫煙のインターバルを長くすることによって、本数はかなり減っていた。

  禁煙を始めるに当って、周囲に「宣言」をして自らにプレッシャーを与える人も多いらしいが、私は人知れず決め、人知れず始めた。 あの歯医者にさえ告げなかった。 禁煙を貫徹する自信がなかったからかも知れないが、寧ろ、「禁煙」などと大上段に構えず、「やって見よう」と云った軽い気持ちだったことの方が当っている様に思う。 そして、3ヶ月経過した今でもこの気持ちは変わっていない。 現時点でも「禁煙」していると云った意識はない。 「今は、煙草を吸っていない」だけだと思っている。

  3ヶ月前は、喫煙習慣を減らすことを意識していた。 今は、その意識は殆どなくなっている。 が、時に「吸いたい気持ちが強くなる」場合がある。 例えば、魚が釣れなくて、気分転換に煙草を咥えた人を見た時等。 寧ろ3ヶ月前よりは吸いたくなった時の欲望は強まっているかも知れない。 が、それも一瞬でなくなる様になって来た。 止めようと云う気持ちよりも、「折角吸わない習慣が出来つつあるのに、勿体無い」と云う気持ちになって来た。 こうして、時間の経過と共に、「煙草」に対する意識は徐々に消えて無くなって行くだろうと思う。 そうなった時に初めて「禁煙宣言」をしようと思う。